『Lucy/ルーシー』/人が宇宙を見上げる理由

2014年8月31日

ルーシー

 

★★(2/5)

 

※以下全ての紹介作品においてのネタバレあり

 

 

インターネット=知という認識から、これからの人類の英知が世界を包み込んでいくという構図は何となく想像できるが、では実際に物語にしてみたらどのように表現できるのだろうか? 最近僕が観たSF系映画の全て(『her/世界でひとつの彼女』/『トランセンデンス』)は、何だかこの表現部類にすっぽりと入り込んでしまったようだ。

 

ネットによる知の共有によって限りなく生産性が高くなり、労働の形がどんどんと変化していく。そんな中注目されている次なるインターネット革命としてのIoTは、まさしくモノとしての存在がそのまま知となっていくような方向性を持っている。その究極的な姿が「特異点」だとしたら、この映画の悪名高き結末も、SFとしてあながち嘘ではない。

 

運び屋として体内にCPH4なるドラッグを埋め込まれたルーシー(スカーレット・ヨハンソン)は、ある事故がきっかけで突如スーパーウーマンに生まれ変わる。はじめはお馬鹿なキャラであったルーシーも、より完璧な知を身につけ始めると人間的な感情を失っていく。マフィアのボス(チェ・ミンシク)に追われながらも、彼女は自分の理解者であろう脳科学者ノーマン博士(モーガン・フリーマン)の元へと進んでいく。   この物語はルーシーの身体に特殊な能力がだんだんと覚醒された時に、彼女の身の回りで起きるハプニング集(映画)である。

 

 

ノーマン博士が脳に関する講演をおこなっているシーンが何度か映し出されるが、この講演内容そのものがルーシーの覚醒されていく姿とうまく平行して混入され、物語として潔く特徴的で面白い。しかし前半部分、物語とは直接関係のないシーンがテンポよく挟み込まれていて、この時の映像が少し陳腐なためか、この時点でこの映画の評価をすぐに決定してしまう人も多いだろう。けれども僕はこのような映画らしい手法の在り方がとても大好きだ。これが後半のクライマックスでルーシーの見つめる世界観にうまく通ずるような作りになっていることを忘れてはならない。

 

このような絶妙(微妙)な場面はいくつかあって、リュックベッソンやスカーレットファンのみならず、登場人物達の心情やその情景を強烈に表現するためのシーンが好きな人にとっては十分楽しめる映画だろう。例えば、ルーシーが刻々とマフィアのボスへと近づいていくシークエンスで音楽が流れている。この時の音楽は、観客が心地よいまたはリズミカルな音楽が流れているなと感じていると、実は登場人物がヘッドホン等で聴いている音楽だったというパターンにあてはまる。良くある表現と言えばそれまでだが、ルーシーのクールな残酷さとあいまってとても印象的なシーンであったと僕は思う。またルーシーが手術室の中で母親にこの映画の鍵となるような思いを携帯電話で伝えるシーンも素晴らしかった。ピアノを弾くあの魅惑的な少女(『バーバー』原題: The Man Who Wasn’t There)から十数年、やはりスカーレットは陽の当たる笑顔よりも影のある姿の方が美しい(個人的見解)。

 

今年観た中で最高の
「登場人物がヘッドホン等で聴いている音楽だったというパターン」

『ディス/コネクト』

 

さて問題となっているクライマックスのシーンはどうだろう。映画通であるならば真っ先に思い出すのが『ツリー・オブ・ライフ』(原題: The Tree of Life)に違いない。映画半ばで恐竜が出現した際には館内全体に寒気がしたのをよく覚えているが、こちらも同様に人類の歴史といった大きなテーマによって物語全体が包み込まれている。

 

ただふたつの映画のあいだで恐らく違うところ、それが僕が映画『Lucy』に対して不満に思ったところでもある。そして、そのような作りになってしまったストーリー自体が既に『Lucy』のつまらなさを体現しているのだろう。『ツリー・オブ・ライフ』がそれでも芸術的な視点からの鑑賞に耐えうるのは(大好きな作品ですが…)、人生の楽しみや苦悩さが、壮大な歴史に直接昇華されるというよりも、子供から大人(ショーン・ペン扮するジャック)になった人物の表情にそれがうまく表現されていたからだ。『Lucy』よりもはるかに抽象的な作りであるはずなのに、それでも人生は儚くしかし宇宙と同じくらい尊いものであるという強烈なメッセージがそこにはあった。その逆に、進化していくルーシーには感情も無いし痛みさえも感じない。物語の途中で同行する刑事に向って発する唯一人間らしい言葉も、むしろ中途半端な捨て台詞にしか聞こえなかった。最後のカットよろしく、結局は短絡的な汎神論へと成り下がってしまった。

 

人が宇宙(究極的な場所)を見上げる理由、それは日常の中で既に手に入れられないモノへの存在が愛しいからだ。ルーシーはあまりにも完璧すぎた。 END

 

 

『ツリー・オブ・ライフ』
テレンス・マリック監督の作品は予告だけで泣ける。

 

『her/世界でひとつの彼女』
スカーレット・ヨハンソンの声だけ作品。ものすごく薄暗い感じが素敵

 

『トランセンデンス』

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