『イコライザー』/なぜ生まれたかを分かった日

2014年10月31日

イコライザー

 

★★★★(4/5)

 

予告を見た時には、驚異的な身体能力を持つという主人公の姿に圧倒されて、これ以上以下でもないであろう展開(勝手な予想)にあまり乗り気ではなかったが、必殺仕事人であろう主人公がどうやら古典文学好きらしい! というそのギャップに惹かれて結局はこの作品を堪能することとなる。あとで思い返すほどこれは極めて内面的で文学的な作品であったと思う。

 

 

物語の冒頭で『トム・ソーヤーの冒険』の著者で知られるマーク・トウェインの言葉が引用される。

 

人生で一番大事な日は二日ある。生まれた日と、なぜ生まれたかを分かった日。
“The two most important days in your life are the day you are born and the day you find out why.” – Mark Twain

 

シンプルだけど、とても良い響きを持つ言葉だ。なぜ生まれたかを分かった日。この言葉が絶妙な隠喩となって、最終的に主人公マッコール(デンゼル・ワシントン)が自分自身の人生をどのように捉えていくのかがこの物語の肝となる。彼は極めて実存的な存在なのだ。普段はホームセンターで働き、夜になると圧倒的な力で悪い奴らを倒していく。職場ではもちろん本当の自分(過去)を明かさない。いつになったら、そしてどのようなタイミングで真の姿を見せるのだろうかという期待感において、この物語は完璧だ。

 

真夜中のカフェで出会った少女テリー(クロエ・グレース・モレッツ)との会話シーンも象徴的で、『老人と海』を語るマッコールの姿をみると、苦難が存在するということが、結果的に生き甲斐をもたらすという人生としてのある局面(性質)に改めて気付かされることとなる。彼にとって苦難とは、まさに悪人の存在そのものであった。劇中で繰り返される悪人に対する彼の積極的な姿を見る限り、そこにはたんなる勧善懲悪としてではない「正義」を感じ取ることができる。自警団としての彼の行動はむしろ自分自身のための「正義」であり、また狂気としての「正義」でもあった。

 

年老いた漁師はなぜ魚を取りにいくのか?

老人と海 (新潮文庫)

 

バットマン(『ダークナイト』2008年)のようにもはや悩む必要はない。次の場面に転換すれば全ては解決しているからだ。もちろん彼は他者(職場の同僚や少女)を助けるという姿勢においても喜びを感じてはいたが、悪人を倒すという方法でみずからによる幸福を味わっていた。そして『ドン・キホーテ』としてのマッコール。自らをまるでその主人公と重ね合わせるかのように語り出すくだりは、何とも言えない哀愁感が漂う。過去としての自分(悪人を制裁する使命)を、たとえ他人に知られていなくても(妄想のようなものであっても)、自分が正しいと思ったことを貫いていくという姿勢。彼のこの姿勢を是か非かで語るという思念は、もはや映画作品レビューにおいては時代遅れなのかと感じながらも、ああ…これはやっぱり究極の娯楽ヒーローだったのねと十分に納得できる内容であった。 END

 

 

騎士道小説が大好きで妄想に陥った主人公が、その「世界」の中で奮闘する物語。

 

真夜中のカフェシーンといえばエドワード・ホッパーの絵画「ナイト・ホークス」を思い出す。インソムニア(不眠症)を楽しむ主人公マッコールの気持ちをうまく体現している絵だ(適当)。

Nighthawks_by_Edward_Hopper_1942

 

 

「理解してもらえないであろう過去としての自分」を他者とどのように分かち合えるのか? 妄想で終わらせたくないのであれば『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(2005年)がおすすめだ。こちらはカフェ店員が主人公。

 

 エンドロールで流れるエミネムの歌

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
Copyright © 2020 アクト・オブ・リーディング ー 映画系カルチャーblog ー All Rights Reserved.  プライバシーポリシー