『キャッシュレス覇権戦争』から読む信用スコアとWeb3.0への潮流

2019年4月24日

日本電子決済推進機構がスマフォ決済サービスとしての「Bank Pay(バンクペイ)」を今秋にスタートすると発表(PDF)した。最大1000行以上の銀行口座対応で、支払いも銀行口座から直接支払われるのが特徴的だ。都度チャージする必要が無く、いわば銀行による “公式’’アプリだ。

 

キャッシュレス覇権戦争 (NHK出版新書 574)

 

決済の方法はQRコードが利用される。これは単純にNFCなどの端末を導入するコストを無くして小売店にもサービスを拡大するという狙いがある。屋台などでもQRコードのステッカーを置いておくだけで良い。このQRコード自体は日本のメーカーであるデンソーによって開発されたが、キャッシュレスの世界においては実質的なスタンダードとなった。

 

 

信用スコアによるプラットフォーム


 

すでにスマフォ決済が普段の生活を覆い尽くしている中国では、アリババグループによる芝麻信用(ゴマ信用/Sesame Creditなどと呼ばれる)によって様々なサービスが展開されている。それらは「与信」システムとしてのプラットフォーム化のみならず、すでに人間の規範としての道徳性や国家によるパターナリズムを語る上での題材にまで発展している。

 

身分特質(年齢、学歴、職歴など)
履約能力(過返済能力)
信用歴史(返済履歴情報)
人脈関係(交友関係)
行為偏好(日常の行動や趣味趣向)

 

芝麻信用では上記の5つに分類された評価の合計によって、個々人の与信が「信用スコア」として点数化されている。ある一定の点数を保持していると、例えば自転車のシェアサービスや図書館を利用する上でのデポジット(保証金)が免除されたり、ビザが取りやすくなるといった恩恵が受けられるという。

 

クレジットカードにおける与信は本来アメリカではじまったが、現在では返済履歴や利用総額などから計算した「クレジットスコア」と呼ばれる点数が利用されている。この情報は第三者によって利用されることがアメリカの法律によって認められ、転職者に対する審査やアパートの契約査定などにも使われているという。芝麻信用も全く同じで、生活の様々なシーンにおいて活用されている。たとえ交友関係などのプライベートな情報が指標として組み込まれていたとしても、上述したような便利なサービスを享受することがインセンティブとなり、この信用スコアによるプラットフォームは日常へと浸透しているのだ(本記事では国家による介在は記述しない)。

 

 

日本ではまだこのような信用スコアによるサービスはさほど認知されていないが、みずほ銀行とソフトバンクの合併会社によって作られた「J.Score」なる消費者金融としてのサービスはすでにローンチされている(ちなみにソフトバンクはアリババの筆頭株主である)。そのサービスによる信用スコアは、まだ多くの外部サービスへと拡張されていないが、このような評価経済によって支えられたプラットフォーム構築という流れはすでにやってきている。この潮流がいわゆる「Copy to China」から「To Copy China」として捉えられる時代の変遷でもある。

 

実質、ソフトバンクとヤフーの共同出資によるPayPayは、イーモバイル契約と連携させるとポイントを進呈するなどの大々的なキャンペーンによってはじまった。個人情報を登録すればするほどお得になる、というインセンティブによる施策は、アリババでの仕組みが取り込まれているのだ。またメルカリは売上金をコンビニなどの店舗で利用できるメルペイにおいて、例えば銀行口座を登録すれば売上金の振込申請期限がなくなるなどのサービスを展開している。これもまたインセンティブ設計による個人情報の収集である。このようにプラットフォーム自体が与信システムへと進化し、更なる外部サービスへと繋がっていく経済圏ができあがりつつある。

 

 

↓メルペイでの銀行口座登録による特典案内

 

 

APIエコノミーからWeb3.0の時代へ


 

このような視点においてあらためてBank Payを眺めると、実質デビットカードがアプリ化しただけなので目新しさはないが、いずれ何かしらのプラットフォームと接続されることは必須だろう。そこで重要となるのがAPIによるデータのオープン化だ。日本電子決済推進機構による発表にも「Bank Pay の機能を小売企業等に開放」と宣言しているように、他のサービスとの連帯がこのBank Payの行方を左右する。そしてそのような接続は、キャッシュレス世界の拡大と共に新たなアプリケーション開発の分野となるだろう。APIによるマッシュアップの動きはWeb2.0として一度訪れたが、信頼という価値自体が伝播されるというWeb3.0としての時代がはじまる。

 

APIエコノミー 勝ち組企業が取り組むAPIファースト

 

 

Web3.0の代名詞とも言われるビットコインやアルトコインによるスマートコントラクトは、現段階では一般的なユーザーによる消費には繋がっていない。単純にボラティリティの問題や法律による制約が大きいことも一因だが、それらがまだ人口に膾炙していないのは、インセンティブの設計によって他の外部サービスと接続されていないからだろう。重要なのは、何かを行うこと(例えばブログ記事を書いたり)によって暗号資産を直接獲得するような仕様ではなく、それを増やすことによってどんなサービスが受けられるのかというUXとしての構築なのだ。そこには信用スコアによるプラットフォーム化と同じく、風船でできたパズルピースのように一気に組み立てる難しさが存在するだろう。後はユーザーが自分の抱く様々な情報(属性)と引き換えに、どんな恩恵を享受するのかという意思決定にかかっているのだ。

 

 

他参照文献


 

 

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