境界の再読を!『開かれる国家』からゴーストの世界へ

2015年8月16日

角川インターネット講座12 開かれる国家 境界なき時代の法と政治<角川インターネット講座> (角川学芸出版全集)

 

 

 

いま「国家」と「インターネット」がおもしろい。インターネットは元々国境を超えるというイメージであるから今更国家なんてワードは古臭いのかも知れない。けれどもマイナンバー法やNSAによる盗聴の話題を知れば知るほどに、情報が個人やひとつの組織を構成することの意味を考えるようになる。

 

 

例えば「プライバシーはなぜ重要か – TED.com」で語られるように、自由意志のつもりで見ていたモノや選択行為が、実は如実なアルゴリズムによって操作されていた結果であったとしたら? そこには情報を共有することによる未来の可能性があるのだろうか。情報を見極め自身を確立していくという心の在り方は、これからどのように捉えていったら良いのだろうか。

 

 

 

 

つまりは「境界」としての問題だ

 

『開かれる国家』の中で散りばめられている「境界」は、情報の共有化が突き進む世界において国家としての枠組みが今後どのような様相になるのかを思考するためのキーワードである。また「「反権力」の時代の終わり」(佐々木俊尚)でも、そのような境界の変化による巨大な組織の変遷について言及されている。アーキテクチャ自体が都市となるような展望を描いた「未来の大都市圏はGoogleとBloombergが構想する」(池田純一)も興味深い。仮想化されたひとつの公共圏が、現実世界と融合する日は近いのかも知れない。

 

 

先日ビットコイン2.0(ブロックチェーン2.0)系のサービスとして注目されている「Ethereum」がローンチされた。非中央集権として分散化されたシステムの中で価値が伝わる。モノのインターネットがこうした価値伝搬システムと融合すればウェブ技術の世界はさらに現実とリンクし拡がっていくだろう。iOSやAndroidのようなプラットフォームが家電の世界にも浸透してくるのは既に時間だけの問題だ。

 

 

私の中のゴースト

 

6月に映画『攻殻機動隊 新劇場版』が公開された。このアニメシリーズにおいて描かれる近未来も、境界問題の世界として捉えることができる。この世界では個人や国家という対立が主流ではあるものの、もはや中心となる舞台は非中央集権的なシステムそのものだ。この物語が面白いのは、そのようなネット空間の中で人間の本質的な存在が「ゴースト」として表現されていることだ。

 

 

 

 

高度な人工知能が発達したその世界では、人は結局、人自身と機械との境界を見分けることができない(チューリング・テストについて書いたブログはコチラ)。そのような世界では、人は人とではなく、コミュニケーションそのものと対話していると表現したほうが妥当だ。心の正体など解明されていなくとも、心を作り出せる世界がある。「そう囁くのよ、私のゴーストが」。これは脳以外の全てを義体化した主人公・草薙素子の決まり文句だが、ゴーストとはそれでも人が人間としてあらしめられているような「何か」として描かれている。

 

 

人工知能時代は、データ蓄積の仕組みで先手必勝」(湯川鶴章)は、まさにそんな物語世界の到来を確信するような記事である。人工知能がいずれクラウドサービスとして展開されれば、先の価値伝搬システムと同様に、ウェブ自体が現実世界における大きな位相空間のような存在となるだろう。

 

 

【第四回】今、最も熱いディープラーニングを体験してみよう」で紹介されている「Clarifai」の画像解析サービスを使ってみた。いわゆる人型としての強い人工知能には遠く及ばないが、ある分野に特化した学習マシンがネットで気軽に利用できることは素晴らしい。人工知能のAPIによるマッシュアップサービスはいずれ次世代のウェブを担うだろう。

 

 

自己の境界

 

以上を踏まえた上で「世界は原子でできているのではない。物語でできているのだ。」(井口尊仁)を読んでみる。井口尊仁氏がはじめようとしている「ベイビー」は、ネット上に人格を形成していくことを目的としたサービスだ。その理念を読む限り、人間対機械という枠組みでさえも意味のない日が来るのだろうと私は感じた。先に書いたように、人は人とではなくコミュニケーションそのものと対話するようになるからだ。そのような世界が本当に訪れた時に、「僕らは物語のある世界に生きている。」(井口尊仁)と確信する。ゴーストの正体は、物語でしか語ることのできないモノ(コト)なのかもしれない。

 

 

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